膀胱穿刺術

急性排尿障害症例において、尿蓄積による腎機能障害は早急に回避しなくてはならない。その一つの手段として、膀胱~体外へとつながる尿道にカテーテルを通す『尿道カテーテル法』と膀胱へ皮膚からカテーテル付き針を用いて膀胱へ直接アクセスする『膀胱穿刺術』がある。また排尿障害の原因が尿道内閉塞物にある場合、稀に『外科的尿道切除術』を用いる事がある。用途は状況に応じ動物にとって安全であり、かつ見通しのつきやすい解決策となる方法を選択し使い分ける。ここで示した膀胱穿刺術は危険性回避の緊急治療として用いられる事もあれば、無菌的尿検査を目的に用いられる事もある。

非常に簡便で短時間で実施できる本方法は、触診で実施する方法と超音波ガイド下で実施する方法がある。方法としては下腹正中より膀胱を触知もしくは超音波画像診断にて膀胱の位置を確認し、穿刺部位を決定する。そしてその部位を入念に消毒した後、膀胱の中央部に向かい24Gまたは22G留置針を刺入する。穿刺により膀胱へのアクセスが完了すると、尿が多く溜まっているケースでは尿が圧でカテーテルに入ってくるのが見える。そうしたら内筒を抜き、外筒(プラスチックカテーテル部)を留置し、延長チューブを付けた注射筒を外筒に接続し、体外へ排尿させる。またさほど尿貯留がないケースでは圧で尿がかえってくるのが確認出来ないケースが多いため、注射筒で陰圧にして採尿できるか確認する。注意事項として膀胱穿刺術実施時の動物の体動、深穿刺による膀胱背側を流れる大血管損傷、膀胱過拡張時の膀胱穿刺による膀胱破裂があるため、実施前に動物の性格、膀胱の拡張度合い等を確認することにより未然に防ぐ事が可能である。