心膜穿刺術(Pericardiocentesis)

Ⅰ:心タンポナーデに対する戦略

 A:心膜穿刺術(右側肋軟骨結合部アプローチ)

  1:鎮静が必要であれば鎮静し、気管挿管し、心電図モニターを装着する。(鎮静がペットにリスクがある場合

    は無鎮静で実施することもあります)

  2:左下横臥位に保定

  3:心臓の拍動の触知が可能な部位に超音波を当て、穿刺部位を特定する(通

    常第5-6肋間)。

  4:穿刺予定部位を剃毛消毒する

  5:外科用メス(No11)で皮膚小切開する(緊急時は5-6を避けよく翼状針により穿刺を実施します)

  6:超音波ガイド下で皮膚から胸壁に向けてなるべく垂直に留置針(筆者は2

    2Gを愛用している)

  7:心膜穿孔の感触を得ると心嚢液がカテーテル内に流入してくる。超音波で

    確認しながら心筋に接触しないレベルまで針を進め、内筒を抜く。

  8:延長チューブにジョイントし、シリンジで液体を吸引する。

  9:超音波で確認しながら可能な限り吸引し、留置針を抜き、動物が覚醒した

    ら気管チューブを抜き、40%酸素室(ICU)へ搬送する。

超音波ガイド下心嚢穿刺

心タンポナーデの超音波画像。黒い丸い部分が心嚢液が過度に貯留した部位。その真中に見える白いラインの中でひときわ凹んで見える部位が心嚢液の圧迫により虚脱した右心房。きわめて危険な画像所見であり救命を急ぐ必要があります。