胸腔内ドレーン設置術

~適応~

胸膜腔内の貯留物を排出するために継続的な吸引が必要な場合。

①緊張性気胸

②数回の穿刺を要する気胸

③膿胸

④乳び胸

⑤悪性胸水症

⑥継続的な胸腔内局所薬物療法を要する症例

⑦胸膜癒着療法を目的とする場合

~カテーテルチューブの選択~

<7kg    14Fr胸部チューブ

7~15kgの犬 18Fr胸部チューブ

16~30kgの犬   22Fr胸部チューブ

30kg以上の犬  28Fr胸部チューブ

全身麻酔下および状況に応じて局所神経ブロック下でドレーンチューブ挿入予定部位に剃毛と消毒をかけます

ドレーン挿入予定の肋間より液体なら尾側2~3肋間の皮膚に、気胸なら頭側へ2~3肋間の皮膚に、メスで小切開を加え、胸部フィステル形成を行います。そして次に皮下トンネル作成に入ります。フィステル部位からドレーン挿入予定肋間までの部位に限定した領域にメッツェンバーム等を用い皮下組織(皮膚と肋骨の間を取り持つ組織)を鈍性剥離し、チューブ挿入出来るスペースを確保します。

ドレーンチューブに三方活栓と20~30ccシリンジを連結します。ドレーンチューブの胸腔挿入側の先端を曲鉗子でつかみ、フィステル形成部位からチューブを挿入し、挿入予定の肋間(液体貯留ならフィステル形成部から2~3肋間頭側の腹側、気胸に対するドレーネージならフィステル形成部から2~3肋間尾側背側肋間に対し)へ皮下トンネルを通し誘導していきます。そして、挿入予定肋間の肋間筋およびその内腔側にある胸膜へ曲鉗子で把持したドレーンチューブを鈍性刺入します。刺入時、肋骨と肋骨の間の尾側にそって走行する肋間動脈を傷付けない様に行う事が重要です。

胸腔内にドレーンがアクセスし、ドレーンに位置が定まったらフィステルからドレーン挿入部の肋間筋の部位から胸腔内へ空気が流入しないように皮膚を抑えながら、ドレーンに連絡しているシリンジ20~30ml用を引きながら胸腔内を陰圧にしていきます。(胸腔内は元来陰圧ですので、外から空気が入ると肺や心臓が圧迫を受けて医原的な気胸状態になってしまいますので必ず行ってください)

陰圧になった事を確認し、皮膚フィステル部位に対し、非吸収性モノフィラメント縫合糸(ナイロン等)を用い、巾着縫合およびフリクション結紮(Chinese hand cuff)を行い、ドレーンチューブと糸を接着剤で固定し、引き抜けないように安定化します。そして、フィステルからの漏出がないか、チューブが完全に固定されているか再確認し、抗生物質軟膏を塗布したサージカルガーゼをフィステル形成部位にあてがいます。 

そして、ドレーンチューブを覆うように処理したストキネットを着せます。術後呼吸状態等のバイタルを観察し、安定が確認されるまでICU管理(40%以上の酸素室)します。

 

~ドレーンを抜くタイミング~

①気体なら貯留が無くなった時

②液体なら2ml/kg/24h以下の貯留になった時

 

~チューブの抜き方~

抗生物質軟膏を付けたガーゼをフィステル形成部位にあてがいながら、ドレーンチューブを傷つけないように巾着縫合とフリクション結紮を解除し、すばやく抜き、周辺部位にバンテージを1~2日巻く。

※皮下トンネルの長さ>ドレインチューブの先端〜遠位の穴までの長さ。となるように設定すること。(=抜去時の気胸予防)