2: PRP(多血小板血漿)療法

PRPとは?

血小板を使用する細胞治療(再生医療)で、ヒトでは特に欧米ですでに治療が進んでおり、有効性の確認もなされてきた。

皮膚にできた傷に血液が出てきて瘡蓋(かさぶた)になる経験は皆お有りであろう。また打ち身などであざ(内出血)した経験もあると思う。
これらは外的刺激を受けた組織の血管の外に血小板が出ている状態であり(内出血)、出血した事によってダメージを受けた組織に出た血小板によりその後に組織は修復に向かっていく。
血小板は主に血液を固める役割を担うとされてきたが、この他に血小板は成長因子と呼ばれるサイトカインを豊富に含む一面がある事が最近わかってきた。
そのメカニズム(身体が元々持っている治す力)を利用した治療がこの治療である。再生医療の中では体細胞療法に属する。

人の再生医療ではこのサイトカインによる組織の修復を促し創傷治癒促進させる事に着眼した治療技術が既に確立され使われてきた。動物においても近年その技術を皮膚の怪我や骨折、靭帯損傷などに応用したところ有効であることがわかってきた。


PRPの語源は血小板をたくさん含む血漿の略である。先に述べた血液に含まれる血小板とサイトカインを効率よく集め、濃縮し、傷害を受けた組織に送り込む治療法の事である。
血液を採取した後、専門の処理を施した血液を分離し濃縮した大量の血小板を採取する。またこの時フィブリンも同時に採取でき、これもまた組織の治癒を促進することとなる。実際どのくらいの血小板を効率的に集められるのだろうか?末梢から採取した血液の含む血小板数は111000-523000/mm3(平均232000/mm3)であり、PRP処理したものは595000-1100000/mm3(平均785000/mm3)であった。おおよその比較で血液に比べ338倍の含有量である事が分かった。また顕微鏡でのカウントによる血液とPRPの比較では末梢血の約900%であった。PRPの技術を用いればそれだけ効率的に血小板や成長因子を組織に送り届ける事が出来る。
ではどのくらいがPRPとしてスタンダードとなるか。Marxらによれば①100万個/μℓ②末梢血の4-7倍どちらかを満たす事とされている。

使用に際してはゲル化させ使用することが多い。理由として3つある。1つは液状だと流れてしまうため長期の効果が期待できないが、ゲル化する事でより長く組織に止めさせゲルに含まれる血小板+フィブリンが架橋となり、線維芽細胞や幹細胞の足場として組織修復の足場を作る目的がある。もう1つはゲルにすることにより血小板達を目的とする組織にしっかりと付けやすく出来、また感染の制御にもなりうる。またサイトカインを徐放しやすい状態にできる。そしてもう1つの理由がゲル化する過程で血小板を活性化させる事ができるため活性化した血小板を組織に送り込む事が可能となるからである。そのため取り出した血小板リッチな血漿をゲル化加工して使用する。

PRPの種類について

実はPRPと一言で言っているが用途に応じていくつかの種類がある。
・LR-PRP
・LP-PRP
・P-PRP

これらは中に含まれる血小板と成長因子や白血球の量の違いで分類されている。含まれる分量は
LR-PRP > LP-PRP > P-PRP
の順で血小板と成長因子や白血球が豊富に含まれる。この配合により治療する目的によって使い分ける。
一般にLR-PRPは白血球が多く含まれる点で感染に対する効果が期待される。しかしその反面タンパク分解酵素を多く含み炎症を促す働きもあるという指摘をする学者もいて、その使用においてまだエビデンスに至っていない。実際のところはLR-PRPの関節内投与で3日ほど腫れる例はいるが回復も早い傾向にある。

なぜPRPは効くのか?

慢性化してしまった傷や関節など自然治癒力の活性化を促し、切らないで治すこの手術方法が注目されている。ではなぜこのPRPは効くのか?

まずその有効性は中に含まれるものを理解するところから始まる。PRPに含まれるものは

血小板
成長因子(下記)

血小板に含まれていて組織が治る上で必要な成長因子をあげる。
・PDFG(血小板由来増殖因子)
・TGF(トランスフォーミング増殖因子)
・FGF(線維芽細胞増殖因子)
・IGF(インスリン様増殖因子)
・EGF(上皮増殖因子)
・KGF(角化細胞増殖因子)
・VEGF(血管内皮増殖因子) 
これらを豊富に含むことにより直接的に損傷部位に働きかけて細胞の増殖を促進させ、組織の再構築をし、スピーディーに組織を修復させる事が可能となるのである。
これら増殖因子はモノクローナル抗体染色により多く含まれる事が証明されており、主に血小板のα顆粒に含まれる。
またこのほか血小板に存在するLysosomal顆粒には消化酵素、Dense顆粒にはADPやセロトニン、膜脂質にはTXA2、Sph-1-p、LPAを含む。

どんな病気に使うのか?


多血小板血漿療法はヒトでは動物医療より歴史が長く、適応についても研究されてきているが、関節疾患や骨折の補助的な治療、皮フの創傷治癒などに使われる。これはそれらの疾患に対する効果が高いと言うことが証明されてきたからである。
特殊な技術を用いて血小板をより多く生きた状態で抽出しPRPを作成し、自己由来成分なため、副作用が滅多にない点、免疫非活性の増殖因子移植である点も支持される理由となる。
ここではヒトにおけるPRPの適応とされる疾患について記載する。

PRP療法の適応(ヒトでの適応)
1️⃣慢性潰瘍
 虚血性
 1.末梢動脈閉塞性
 2.糖尿病性血管障害
 糖尿病性
 1.神経障害
 静脈鬱滞
 放射線性
 熱傷性
 薬剤性
 褥瘡性
 1.ポケット縮小
 2.wound bed preparation
 3.Critical Colonaization
2️⃣急性潰瘍・熱傷
3️⃣骨折治療・骨形成
4️⃣血管再生
5️⃣嚢胞
6️⃣植皮
 1.Donor Siteの質的向上
 2.Recipient Siteの生着率向上
7️⃣一般的創傷治癒
 縫合部・開放創・皮弁下
8️⃣瘻孔
3Mテガダームフォームドレッシング
3Mテガダームフォームドレッシング

臨床応用について

→犬における臨床応用

1:前十字靭帯断裂

2:皮膚難治性潰瘍or褥瘡(pressure sore)
慢性化した創面や浸出液内はサイトカインが枯渇し治癒力も落ちている。そこへサイトカインに富むPRPを入れることにより慢性化した炎症部を急逝状態にして治癒を促進する事が期待される。
 ①局所(褥瘡部)の環境改善
 ・壊死組織の除去
 ②軟膏療法
 ・ブグラデシンNa軟膏
 ・アルプラスタジルアルファデクス軟膏
 →細胞内cAMP上昇→細胞活性化→線維芽細胞増生、新生血管新生
 ・ヨウソ含有カデキソマー軟膏
  →持続性殺菌作用+軟膏基剤に浸出液吸収し肉芽形成+上皮化促進
 ・トレチノイントコフェリン軟膏
  →直接線維芽細胞、血管に働く事で組織増生
 ③bFGF療法
 ・フィブラストスプレー
  適応:壊死組織が無い部位(除去してれば使える)
  作用:線維芽細胞増生、血管新生
  用法:スプレー後、軟膏や創傷被覆剤
 ④創傷被覆剤
 ・人工真皮
  コラーゲンスポンジ内に線維芽細胞侵入させて真皮様構造へインテグラ®︎デルターミス®︎
  人工真皮をPRPのScaffoldとして使用する。
  ※感染創には使えないのだデブリードするまたは開放創
 ・アルギン酸塩被覆剤
  漿液を吸水させゲル化しウェットを保つ
 ・ハイドロコロイド創傷被覆剤(デュオアクティブ)
  コロイドによる浸出液吸着
 ⑤PRP
  PRP+ハイドロコロイド被覆剤+その上から3Mテガダームを貼り、一週間毎に交換。


○前十字靭帯断裂

○皮膚欠損(犬)
対象:交通事故による後肢肢端の皮膚欠損
方法:患部の洗浄→WBCに富むPRPゲル+バイトドレスで閉鎖環境
結果:7日後は皮膚色悪く、14日後皮膚色戻り肉芽出てくる。さらに21日後に上皮化が見られ治癒した。
考察:

○皮膚欠損(猫)
対象:外傷による皮膚が部分的に脱落した猫
方法:患部の洗浄→PRP+メロリンで閉鎖環境
結果:23日後に肉芽が大量に出始める、50日後に発毛が見られ治癒した。
考察:

○骨折治療
アクティベートされた血小板を含むゲル
アクティベートされた血小板を含むゲル