他院から手術執刀の依頼。
術前検査所見
・FNA:肛門嚢腺癌（AGASACA）疑う
・血液検査:高Ca血症（−）
・US:病巣2.8×1.6cm、領域リンパ節転移（−）
・CT:遠隔転移他（−）
この場合だと原発巣切除が適応となるため肛門嚢摘出を実施した。この手術は解剖学的マージンがとりにくいオペの１つである。この手術の手技は→肛門嚢摘出術
また稀に肛門周辺を構成している筋群が除去される事で術中に会陰ヘルニアを生じるケースがあるため、会陰ヘルニアの術式もノーインプラントで習得された方が執刀した方が安全だと思う→会陰ヘルニア術式。また稀に肛門嚢の腫瘍が直腸壁に癒着しているケースもあるため腫瘍を取り除いたあと直腸壁が欠損部の再建も急に執刀医には求められる事があるので心得ておく必要がある→直腸縫合術
術後化学療法で使用されるものは
・CBDCAカルボプラチン
・DOXドキソルビシン
分子標的薬療法として
・トセラニブ
術後補助的化学療法に用いるカルボプラチンについてはいくつかの報告がある。
Anal Sac Adenocarcinoma in Dogs
World Small Animal Veterinary Association Congress Proceedings, 2016
Ramesh K. Sivacolundhu, BSc, BVMS, MVS, FANZCVS (Small Animal Surgery)
Director of Department of Surgery and Oncology, Vet24, Balcatta, WA, Australia
この論文は2016年、本疾患の生物学的挙動、臨床兆候、診断と治療、予後因子などを載せた総論的データ。カルボプラチンを使用したAGASACA総疾患中、33%の部分反応である報告。
Evaluation of adjuvant carboplatin chemotherapy in the management of surgically excised anal sac apocrine gland adenocarcinoma in dogs
R M Wouda et al. Vet Comp Oncol. 2016 Mar.
この研究では原発巣摘出及び必要に応じてリンパ節覚醒をした個体に対して術後抗がん剤療法としてのカルボプラチンの効果について比較している。予後には変化がなかったと結論つけられているが対象患者の選択に対して各ステージの患者を同じ数集めて同じ条件での比較がなされたらさらに良いと感じる。また近年、この腫瘍に対してトセラニブの有効性も報告されている。
Preliminary evidence for biologic activity of toceranib phosphate (Palladia®) in solid
tumours∗
C. London1, T. Mathie1, N. Stingle1, C. Clifford2, S. Haney2, M. K. Klein3,
L. Beaver3, K. Vickery3, D. M. Vail4, B. Hershey5, S. Ettinger6, A. Vaughan7,
F. Alvarez8, L. Hillman9, M. Kiselow10, D. Thamm11, M. L. Higginbotham12,
M. Gauthier13, E. Krick14, B. Phillips15, T. LaDue16, P. Jones17, J. Bryan18, V. Gill19, A. Novasad20, L. Fulton21, J. Carreras22, C. McNeill23, C. Henry24 and S. Gillings25
トセラニブを投与したアポクリン腺癌32頭のうち、PR25%.SD62.5%、治療期間中央値31weeksで投与量と間隔は2.2-3.25mg/kg月水金投与であった。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22236194/
術中所見