咀嚼筋炎

【咀嚼筋炎とは?】

咀嚼筋とは固いものをかじったり口を閉じる働き役割をしている筋群です。

咀嚼筋炎とはそこに生じる筋炎の事を指しますが、多くが自己免疫性です。 

体は本来、自分の体を異物として認識しないため攻撃する事はありませんが、何らかの原因で自分の体を異物(自分ではない)と誤認識して破壊してしまう病気の事を自己免疫性疾患といいます。その自己免疫性疾患という病気のうち、咀嚼筋が標的になり、誤って作られたその自己抗体によって咀嚼筋をどんどん破壊し症状を発症します。時間が経過すると破壊された筋肉が元通りならないため口が開けられないなどの症状がのこる病気です。閉じるための筋肉が破壊される病気だから破壊されたら口が開くというイメージを持たれる方も多いですが、閉じるための筋肉が線維化して動かなくなり固まると開かなくなるという解釈をするとイメージが付きやすいかもしれません。

一般的にはこの病気は咀嚼筋に限定した症状の子が多いですが、多発性筋炎を併発する事もあります。

 

 

【好発犬種は?】

どの犬種も罹患する可能性はありますが、若齢の大型犬やジャーマンシェパード、レトリーバー、ドーベルマンピンシャーに多い傾向です。

 

【ステージと症状】

・急性期・・・筋線維に自分を破壊する著しい炎症細胞の浸潤が起こり激しい炎症反応が起こります。咀嚼筋はその炎症による腫れや顎の痛み、筋肉の炎症や顎の痛みからくる開口困難、全身のだるさや元気消失、発熱やリンパの腫れが見られる事も多いです。

・慢性期・・・この時期は炎症のほとんどは消失しますが急性期に起きた筋肉の激しい炎症で破壊された筋線維が線維に置き換わる事で咀嚼筋が萎み、口が開けづたくなりご飯も取りにくくなる事もあります。この咀嚼筋が萎む事は側頭筋萎縮と呼ばれ一つのシグナルです(側頭筋は咀嚼筋の一部位の名称です)。側頭筋萎縮のみで開口に異常が見られないパターンも経験があります。

  

【診断】

咀嚼筋炎は下記の項目で診断を進めていきます。

1:血液検査

 ①血球検査・白血球増加

 ②血液生化学検査・CPKの増加・ASTの増加・CRPの増加

 ③免疫学的検査・咀嚼筋抗体検査2M型筋線維は咀嚼筋に存在し四肢の筋にはないため抗体が高ければ診断になる

2:画像診断

 ①CT

 ②MRI

  これらは類似した症状を起こす多発性筋炎という筋肉の病気や三叉神経炎という神経の病気のチェックに用います。

3:筋生検

 筋線維の線維化がどの程度進んでいるかの判断となる。

 

【治療】

 急性期・・・免疫反応による炎症を抑え筋肉の破壊を止める事を行います。筋肉に起きた免疫性の炎症を抑えるためにステロイドや免疫抑制剤を使用します。3週間毎にCPK、CRPを測定しステロイドを30%ずつ減薬していきます。最低量1日1日おきに出来たらその量で4-6ヶ月継続します。反応に応じて免疫抑制剤の併用を検討します。

慢性期・・・この時期は炎症は消失していることも多いですが筋肉の激しい炎症と破壊から線維化してしまった咀嚼筋が動かず口が上手く開けられない、食べにくいなどといった症状のケアが中心となります。炎症は消失している時期のためステロイドを投じて免疫による筋肉の破壊を抑えようとしてももう炎症は終わり筋肉も破壊されつくしているため免疫細胞や炎症を抑えることで効果を発揮するステロイド剤は効果をなさない時期である。開口困難や摂食が困難な点へのアプローチとして食道チューブや胃瘻チューブを検討する。

         

 

 

 

【予後】

ステロイドの奏功する急性期、すなわち筋肉が線維化する前に治療がなされると予後は良い傾向です。