重症胆道肝炎のPR(肺動脈逆流)

2ヶ月間、他の病院で治療して治らず重症化したプードルがショック状態で当院に来た。

来院時のバイタルは非常悪く意識昏迷。低血糖26。心拍出量増加+心拍数増加+末梢血管抵抗低下。血管内ボリュームはHypovolemicで循環血液量低下や敗血症性ショックが疑われるパターン。

急性胆道肝炎は重症化すると低血糖におちいる症例をしばしば経験する。また神経症状を示す子もいる。そのため鑑別としての低血糖スクリーニングは当然必須となる。

今回担当させてもらったこの子は血中アルブミン蛋白の減少や循環器の異常などのいろいろな異常が見つかり治療にはやや気を使った。
輸液適正量算定のために行った循環器スクリーニング検査ではPR(肺動脈逆流)が見つかった。重症度計測はV=0.26m/sから拡張末期肺動脈-右室圧較差P=mmHgから算出した。
この他にもTR(三尖弁閉鎖不全)、AR(大動脈弁逆流)などいずれも軽度ではあるが併発していた。上の画像にはARとPRが映っている。

この肺動脈弁逆流が確認された場合、我々臨床の現場の人間はまず二次性の肺高血圧症(PH)をもとに発生する事が多い事から肺高血圧症の有無を評価する必要を考える。本例もTRも併発しており右心機能評価からPH由来PRがまず疑われた。また敗血症性ショック全身性炎症疾患に罹患していたため、それに起因し発生しうる急性右心機能障害も念頭に入れて画像所見ならびに血液培養を評価し治療に臨む必要がある。

集中治療で推定完治に6日、経過観察期間に11日を要した。