三尖弁の腱索断裂を起こしたPH(肺高血圧症)

1年ほど前からPH(肺高血圧症)で右心室収縮期圧上昇によるTRに対しタダラフィル+利尿剤+ACEi+硝酸塩+抗血小板剤等の多剤併用を軸とした治療を行い長く安定していた老犬が2ヶ月前あたりから右室内圧の急性増悪が見られたため追加精査をした。

電気生理学的検査などには異常が見られなかったが超音波画像診断の左傍胸骨心尖部四腔断層で三尖弁の腱索が切れている事が判明した。この三尖弁検索断裂時の右室右房間圧較差(TRPG)は62.8mmHgと肺高血圧症としてはまぁまぁな中度に分類されるものであった。このレベルのTRPGのPHはしばしば見るが腱索断裂に至る子は多くない。

PHは原因となる疾患の治療がまず優先される。それがTRの軽減に寄与する。この症例では一年前のPH発症時、失神と元気食欲の低下で来院された。血液凝固系検査で異常があり、一般的な右心不全の治療に抵抗性であったため血栓症に対する治療を実施したところ劇的と言えるレベルの顕著な改善をみた。当初、患者がウェスティーという犬種であったため肺線維症に由来するPHを疑ったがそれもみられなかった。また肺血流量を増やす疾患の存在もなく、肺血管抵抗を増加させる肺疾患やフィラリアなども無く、左心不全や心筋症による肺静脈圧増加(左房からの肺静脈径の計測しかしていないが)は異常も観られない、その点からPHタイプ4または6(血栓塞栓症または特発性)と考えられる症例であろうと考えた。

しかしながら弁膜疾患は安定していた症例であってもひとたび腱索断裂を起こすと急に循環器薬剤に対しコントロールが効かなくなり一気に悪化する傾向にある。

TR→右心の容量負荷上昇→右心系(右心室・右房)拡大→三尖弁輪拡大&tethering増強→TRの増悪というメカニズムもケアが必要である。
また念のための血液培養も実施している。ここでは一部心エコーを載せているので参考に。
今年で17歳になる。

           
23.1.9 ちょっと前の記載になるが載せ忘れたいた。

動物医療でも開心ではなくMitra Clip出来たらと思う。
https://youtu.be/4SuTQ49VmjQ